テレビ・ワンシーン考現学 (1) 「突然の雨」はドラマの場面転換としてさすがに使われすぎている
○フラれた日は往々にして折り畳み傘を持っていない
小説雑誌の新人賞の作品を下読みしているライターから愚痴られたことがある。いたって平凡で味気ない応募作が無理やり話を劇的に動かそうと試みる時、やたらと主人公がリストカットし始めるのだという。応募者はオリジナルなものを書いたと思っているに違いないが、退屈なリストカットストーリーが蓄積されていく。話の展開に困ったらリストカットって、本当に困っている人に失礼である。突然の雨を降らしておこう、という判断もこれに似ている。
突然の雨はいつ降るか。大きく分けると2つ。心情の高まり、もしくは落ち込みに合わせて降る。
友達以上恋人未満の間柄がやっぱり恋人になる運命だったんだと互いに気付いた場面では、突然の雨が降りやすい。この時、傘を敢えてそこら辺にほっぽらかし、ずぶ濡れの中で抱き合うことを選ぶ。失恋や離縁や解雇や訃報といった失意の場面でも突然の雨が降る。今日は恋人から別れ話を切り出されるかもしれないと勘付いていてもいなくても、天気予報くらい確認して出かけるはずだが、フラれた日は往々にして折り畳み傘を持っていない。ずぶ濡れに耐えなければいけない。
○大規模な積乱雲が発達しないので、夕立は大雨にはならない
皆さんがどのような時間帯に愛の告白をしているのかは存じ上げないが、早朝から告白する人はいないだろうし、ランチタイムも不向きなはず。