女の節目~人生の選択 (15) vol.15「初めての、会社員」【24歳】
学生のときは気づかなかったが、これらのどこまでを仕事と呼び、どこからをサボりと呼ぶのかは、なかなか判断しづらい光景である。
「おごってやるよ」と言った先輩の幾人かは、どんな店でも社名の領収書を切っていた。一方で、自腹を切ってケーキセットや豪華な昼食をおごってくれる先輩もいて、「本当におごってくれるんですか?」と驚くと、「何言ってるの、こんなことで会社の経費は使えないでしょ……」と驚き返された。言われてみると、他の先輩が切った領収書とて、本当に後日精算して経費で落とされたかは定かでない。新入社員の前で、それぞれに吹き荒れる、先輩風。身を任せているうちに、約三ヶ月の研修期間が終わった。
○一歩千金の夢
入社採用面接では口が裂けても言えなかったが、私が就職した本当の理由は、「人生一度でいいから、サラリーマンというものを経験してみたかった」である。なぜなら、一番身近な大人である父親がサラリーマンだったから。
よく就職相談に乗ってもらった大学の恩師もまた、長年サラリーマンを経験して独立した勤め人だった。恩師からは「最初の10年は、同じ会社で頑張りなさい」と繰り返し言われた。私が通っていた大学は、日本企業に入った卒業生の離職率が異様に高いことで知られていた。