女の節目~人生の選択 (16) vol.16「初めての、通院」【27歳】
生まれてこのかた大きな怪我や病気をしたことのない私は、だからこそ「病弱」な人々に見果てぬ夢を描き、憧れ、羨んでいた。それはたとえば、バーネットの小説『秘密の花園』に出てくる車椅子の少年コリンのような男の子、ちばてつやの漫画『ユキの太陽』に出てくる社長令嬢の岩淵早苗ちゃんのような女の子。
児童向け作品のおてんばヒロインに感情移入しながら私は、「自分にはないもの」を持った臥せりがちの美少女美少年に惹かれ、彼ら彼女らと親密になりたいと願っていた。美しく裕福で儚げな、籠の鳥。二本の足で立ってどうとでも歩いていける野生児の私と違って、誰かの支えや特別なしつらえを伴わなければ命をつなぐことも難しい存在。モヤシッ子が筋骨隆々のマッチョなヒーローに憧れるように私は、触れなば落ちん、という風情の瀕死のヒロイン(年齢性別不問)にグッとくる。裏返せば、それだけ自分が頑丈だったのである。
学校の図書室で借りて読む本の中では、貴婦人がしょっちゅう気絶しては気付薬を嗅がされ、お嬢様はサナトリウムで肺病と闘い、戦場から生還した勇者は古傷の疼きや幻肢痛に悩まされている。
私はそのどれも経験がない。「朝礼の最中に貧血で倒れる」