女の節目~人生の選択 (16) vol.16「初めての、通院」【27歳】
とか「手術のために入院する」とか、一度やってみたいなぁ、松葉杖で登校できれば最高……と思案しながら車道を横切っていたら通りかかった軽自動車にハネられ、ボンネットに乗り上げるまでの交通事故に遭った。き、キター! と大興奮のまま整形外科へ担ぎ込まれたものの、診断は「全身打撲」でその日のうちに家へ帰され、「えー、骨折じゃないのー」と不服を申し立てるような小学生だった。
小児喘息で入院した経験のある級友からは、「病院生活って、あんたが思ってるようなイイもんじゃないんだから!」とさんざんなじられ、しばらく口をきいてもらえなかった。経験をもって発せられる言葉の重みがグッと胸に響く。彼女がたった一人で克服したその苦労を、みずから勝ち取った生きる喜びを、同じ年の私はまったく知らない。自由と不自由、健康と不健康、生と死。片方しかない自分がひどくアンバランスに思え、ますますもう一方を「経験」したくなった。今度は『王子と乞食』めいた話だ。
そして、「おまえさん、そんなに病弱なお姫様になりたいんだったら、あたしがその夢を叶えてやろうかえ……?」と、森で悪い魔法使いにそそのかされたわけでもなかろうに、二十歳を過ぎてからの私は、急速に自身の健康を損ねていくことになる。