女の節目~人生の選択 (17) vol.17「初めての、一人旅」【31歳】
同じ話を繰り返して書くつもりはないのだけれど、この「貸費奨学金として機能する教育ローン」という仕組みは、私の20代を本当によく支えてくれた。たしか、途中で退学したり前科者になったりすると即刻全額返済という規定があったのだ。卒業と同時に月々の返済が始まるので、よほどの一攫千金がない限りは手堅く就職するのが無難だろうとも思うようになった。こうした「枷」がなかったら、どこまで道を踏み外していたことか。「この世に自分ほど信じられんものがほかにあるか!」は横島忠夫の金言にして私の座右の銘だが、自分と違って、お金は裏切らない。諦めが早く怠惰な自分と違って、どこまでも謹厳実直かつ執拗に私を追いかけてくる。
たかが数百万、されど数百万。当時、生では見たこともない桁の金額だ。
完済予定日に書き込まれた「2014年」という想像もつかない遠い未来。19歳当時の私は真剣に、34歳までに自分が死んでいるか、地球が滅びている可能性のほうがずっと高いと思っていた。どっこい生きてる、30歳。10代のとき買ったTシャツを着て、10代のとき住んでいた町の銀行通りで、すっぴんに汗だくでアイスレモネードを飲んでいる。あの頃と何も変わらないのに、今日からはまるで大きく違う。