女の節目~人生の選択 (17) vol.17「初めての、一人旅」【31歳】
たいした料金でもないのにバカみたいに早くから取っていた割引チケットは無駄になり、ホテル代なども含めると、正規料金との差額より高いキャンセル料が発生した。
有楽町の交通会館の前で、歩きながら携帯電話で旅行会社とやりとりをしたのをよく憶えている。真夏日だったが、せいぜい6月か7月初旬だろう。ランチタイムのOLはみんな日傘を差していて、私だけ手庇で直射日光を避けつつ、アスファルトからの反射熱に焦がされていた。台湾の夏はもっと暑いと聞く。行きたいな。仕事だからしょうがないけど。電話口で「ご予約の取り直しをなさいますか?」と尋ねられ、私は「いいえ、結構です」と答えた。
数日遅れて本当に夏期休暇が取れるなら、その日の朝に正規料金を握りしめて乗れる飛行機に飛び乗って、それで台湾に行こう。そうすればいいんだ、私にはお金があるんだから、労働組合であれだけ闘争した甲斐あって、ボーナスだって入るんだから!
結局そんなことはせず、その年の夏休みはクーラーの効いた自宅の部屋に閉じこもり、漫画を読みDVDを観ていつものようにダラダラ過ごした。お金があっても時間がない。時間があっても管理できない。遊びに出かける気力もない。