女の節目~人生の選択 (17) vol.17「初めての、一人旅」【31歳】
そしたら私、ずっとこのまま、こうやって生きて死ぬんだろうか。幻に終わった一人旅が私にもたらしたショックは、旅先で受けたであろうカルチャーショックより、ずっと大きかったと思う。
○仕事は、お金のため、ならず
もちろん、こんなことで会社を辞めたわけではないけれど、会社を辞めようと決めた際、このときのこともよく思い出した。「私はいったい何のために働いているんだろう?」という自問を繰り返すようになったのは、入社時からずっと志望していた編集部に晴れて転属となって以降のことだ。
私の望みは、出世もせず転職もせず、同じ職場環境でずっと自分の好きな本を作り続けること、それだけだった。独立や起業の夢を語る同世代の話も、自分とは無関係な遠い出来事として聞き流していた。なぜなら私の望みはすでに叶っているから。あとはこれを定年退職までしぼませないように、さらに大きく素敵にふくらませていくだけだ。
「本当に?」と問われたら、YESと答える自信があった。「では、何のために?」と問われると、途端に足元がぐらついた。
「決まってるじゃん、働くのは、お金のためにだよ」ときっぱり答える友人たちがいた。妻子や親を養っていたり、開業の準備をしていたり、あるいは、テストの点数を競い合う学生と同じ感覚で「35歳までに2億!」