くらし情報『テレビ・ワンシーン考現学 (19) 「ここからはカメラ止めてください!」の仕組み』

テレビ・ワンシーン考現学 (19) 「ここからはカメラ止めてください!」の仕組み

むろん、トラブルが生じ、それを論議しにいった場面はいくつも思い当たるが、それは対応すべき所作がおおよそ想定されていた。「カメラ止めて下さい」が百発百中ならぬ百発八五中くらいで登場するのは、カメラが人に向かうことのイレギュラーっぷりを教えてくれるわけだが、被写体側がその「八五中」に収まってやろうと体を仕向けている結果でもあるのだろう。

明日から貴方にテレビカメラが密着すると想定する。4ヶ月後に30分番組で放送すると言う。貴方はいくつものプレッシャーを感じるだろうが、その最たるものは、「なにか出来事を起こせるだろうか」というもの。そんなプレッシャーにかられた貴方は、ついつい「あっ、ここはちょっと撮らないでください」という場面を作ってしまう。ドキュメンタリーで頻出する「カメラ止めて」はおおよそ作為的なのではないか。「カメラ止めて」には、自発型、用意周到型、協力型、いろいろな型がある。
これを気にし始めると、テレビ放映されるおおよその人物ドキュメンタリーに没頭できなくなるのでお勧めしないのだが、お裾分けしてみる。

<著者プロフィール>
武田砂鉄
ライター/編集。1982年生まれ。2014年秋、出版社勤務を経てフリーへ。

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