2015年12月8日 12:37
抱きしめてヴィーナス - 探査機「あかつき」、金星への帰還 (1) 「あかつき」はこうして生まれた
そしてPLANET-Cが、この新型スラスターの採用第1号になることになった。
○M-VからH-IIAへ
PLANET-Cそのものの開発は順調に進んだが、それ以外のところで大きな問題が起きた。打ち上げロケットの変更である。
当初の予定では、打ち上げには「M-V」ロケットが使われることになっていた。M-VはISASが開発した全段固体燃料を使うロケットで、世界の固体ロケットの中でも高い性能をもっていた。しかし、コストが高いという欠点があり、JAXAは2006年、M-Vを退役させる検討を始めた。
このとき、PLANET-Cの打ち上げをどうするのかという議論が起こった。「あかつき」はM-Vで打ち上げるように造られているが、機体が完成し、打ち上げられるのは2010年になる。
それまでM-Vを延命させるのか、それともH-IIAロケットで打ち上げるのかが検討され、最終的に後者が選ばれた。
H-IIAはM-Vとは違い、液体の推進剤を使うロケットであるため、乗り心地は比較的良いほうだった。しかし、大型ロケットのH-IIAにとってPLANET-Cはあまりにも軽く、振動が発生することが問題になった。その振動はPLANET-Cの固有振動数と一致しており、そのまま打ち上げると共振を起こして、壊れる心配があった。