2017年5月19日 18:05
『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督を直撃! すべてを見せない演出の美学とは?
小説を読むと現実逃避できたし、自分の周りの世界を理解する手立てにもなったよ。
――SF映画の中でも特にどういう作風のものが好きですか?
僕が惹かれるSF映画は戦争ものやハイテクものではなく、もっと実存主義的な未知な世界を模索するようなタイプの映画だ。
スタンリー・キューブリック監督作『2001年宇宙の旅』(68)を観た時、強い恐怖心を感じことをよく覚えている。その時の恐怖心は、自分が触れたり、理解したりできない1つのアート作品であったところから感じたものだろう。僕は美しいまでの恐怖心にすっかりハマってしまい、SF映画好きになったんだ。
――SF映画を撮る上で、どんなことを心がけていますか?
なるべくミステリーを保持するよう、すべてを描かないように努めている。『メッセージ』の美術についても、デザイン、画コンテ、撮影という段階を踏んでいく中で「船内をもっと見せてください」というリクエストがたくさん入ったが、僕は頑なにそれを拒否したんだ。
――見せないことでイマジネーションが広がるということでしょうか?
そうだね。
「操縦するのが操縦桿なのかボタンなのか、どちらかを見せたい」とスタッフから言われたけど、その辺はミステリーに留めておいた方がいいと思った。