堺雅人の表現力は"魔法の仮面" 想像力限界に挑む『鎌倉ものがたり』
心の痛みをカラダの痛みに置き換えて表現するのは、演劇的表現だ。これが、この映画ではかなり効いていた。
最近、アニメーション映画『君の名は。』や『この世界の片隅に』で描かれる背景や人間描写がリアルなこの現実よりも豊かに細かく描かれ、人間の方は、漫画の絵を真似しているという逆転現象が起こっているところで、堺雅人は想像力の限界まで人間の感情を表現するという偉業をやってのけた。
亜紀子を迎えにいって黄泉の国をふたりで逃げ、ある伏線によって事態に変化が起こる流れは、脚本もよくできているし、CGもすばらしいし、音楽もいいのだが、やっぱり俳優の表情が、映画のわくわく感を後押しする。だからこそ、映画がすてきな体験になった。
堺雅人は、魔法の仮面をかぶっている。
■著者プロフィール
木俣冬
文筆業。
『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
レディー・ガガ、ジェナ・オルテガ主演ドラマ「ウェンズデー」シーズン2に出演へ