SNS激賞!『スリー・ビルボード』がただのクライムドラマに収まらない理由
それにしても悲劇的ヒロインにして、恐るべき狂犬ぶり!
ミルドレッドのすぐ人に噛みつくデンジャラスなキャラクターには誰もがドン引きしそうだが、特筆すべき点は、その怒りが絶望的な悲しみに裏打ちされたものだというところだ。眉間にシワを寄せ、つり上がった目からは、誰にも届かない慟哭が聞こえてくるよう。まさにオスカーに値する熱演である。
彼女のベストワークは間違いなく『ファーゴ』だと思うが、今回の演技はそれに相当する凄みがある。『ファーゴ』の監督で夫でもあるジョエル・コーエン監督が嫉妬してもおかしくない出来栄えなのだ。
○■物語を動かしていく脇キャラも強烈
狂犬ミルドレッドに怖じ気づくことなく、果敢に向かっていく男たちも実にいい。彼女と同じく直情型であるディクソン巡査役のサム・ロックウェルと、懐の深いウィロビー役のウディ・ハレルソンは、揃って助演男優賞にノミネート。
烈火のごとくぶち切れるミルドレッドに対し、ディクソン巡査役は火に油を注いでしまい、さらに熾烈な争いとなる。
ウィロビー署長は火消しに回るも、その後意外な行動に出る。この2つの流れが脚本の妙。中盤からは、それぞれのキャラクターの内面があぶり出されていき、観る者の心に波風を立てていく。