2019年11月11日 17:00
山田裕貴、『ハイロー』『なつぞら』話題の裏に名優にも通じる精神
この時代、若手俳優がたくさんいて、群像劇に投入されるしかない状況下、どうやって一歩抜きん出るか、誰もが課題にしているであろう中で、山田は『あゝ荒野』のような凄みを磨くのではなく、特徴ある上瞼の目尻にかけての切れあがり具合が匠の絵のような瞳のチカラを緩めるという逆転の発想で集団から飛び出した。
○■名優と同じ考え方
『なつぞら』では広瀬すず演じるヒロインの幼馴染で、実家の菓子店のあとを継がないといけないが、演劇が好きで東京で劇団に入る。主役に抜擢されるところもまでいくが、自分の才能に見切りをつけて実家の後を継ぐ役だった。この役・雪次郎には、役者は「普通」が良いという持論があり、番宣で山田はその考えは自分がかねがね思っていたことだと共感を寄せた。それを耳にした脚本家・大森寿美男は、「普通」「アマチュア精神」は日本の老舗劇団・文学座の名優・中村伸郎が言っていたことだから、名優と考え方が同じなのだから自信をもっていいと語っていた。
このアマチュア精神とはなにか、普通であれという考え方はなんなのか、山田裕貴が中村伸郎の言葉を読んでいたかが知らないが、中村伸郎の考えが詳しく書かれた本がある。劇作家・如月小春が取材して書いた『俳優の領分―中村伸郎と昭和の劇作家たち』だ。