奥様はコマガール (40) 阪神ファンの夫と巨人ファンの妻
である。
7歳上の僕と結婚して以降、テレビに阪神戦が映る環境に徐々に染まってきたのか、最近では阪神が勝利した瞬間、僕と一緒に喜ぶことも増えてきた。
阪神ファン化が進んでいるのかもしれない。
だから、僕らはいわゆる阪神・巨人論争で揉めることがない。
2人で阪神・巨人戦を球場観戦するときは、僕の希望で阪神側に陣取るのが通例なのだが、チーは特に抵抗することなく、平気な顔で席に座っている。
いやはや、そのへんは本当に楽な女性だ。
とはいえ、チーの体には幼少期から育まれた巨人ファンの血液が根強く流れているのだろう。
以前、東京ドームの阪神・巨人戦を観に行ったとき、特にそう思ったのである。
その日の試合は、序盤から巨人が阪神を圧倒的にリードする展開だったため、東京ドームの阪神側スタンドに陣取る数万人の阪神ファンは一様に意気消沈しており、暗いムードが漂っていた。中には口汚い罵声を飛ばすガラの悪いファン(こういう阪神ファンは嫌いです)もおり、実際いくつかのメガホンがグラウンドに投げ込まれていた。
そんな中、僕の隣のチーだけが、あろうことか無邪気に喜びを爆発させたのだ。
「わー、やったー! さすが由伸ー! 」。