奥様はコマガール (40) 阪神ファンの夫と巨人ファンの妻
当然、周囲の阪神ファンの視線が一斉に集まった。
しかし、チーはそれに気づいていないのか、どこまでもヘラヘラした顔で「巨人、強いねー! 」と僕に話しかけてくる。
あわわわ、あわわわ。
僕は一気に狼狽した。
チーさん、それはさすがにやばいって。
いくらなんでも場違いすぎる。
こんなガラの悪い阪神ファンがたくさんいる中で、彼らの神経をむやみ逆撫でするような巨人ファン発言は、ほとんど自殺行為だ。
おそるおそる周りに視線を配った。
すると、数人の阪神ファンが怪訝そうな表情で、僕を睨んでいた。
きっと彼らは僕のことも巨人ファンだと思ったのだろう。
チーが「巨人、強いねー」などと嬉しそうに同意を求めてくるからだ。
普段、僕は球場で野球観戦をするとき、阪神の帽子をかぶったり、レプリカユニフォームなどを纏ったりしない主義だ。
メガホンすら一度も買ったことがなく、いつも普段着のまま席に座ることにしている(立って応援するのも嫌い)。
といっても、そこに何か深いポリシーがあるわけではなく、単純にグッズ類には興味がない淡白な性格なのだ。
したがって、傍から見たら阪神ファンだと思われにくいのだろう。