読む鉄道、観る鉄道 (11) 『大いなる旅路』 - 脚本・新藤兼人、主演・三國連太郎で描く機関士人生
形式までは追いきれないものの、二軸貨車も多く登場し、まるで「動く貨車カタログ」のようだ。
浩造が担当する列車はほとんどが貨物列車で、当時の日本の物流の主役は貨物列車だったと実感できる。
戦時の物資不足を示すエピソードとして、蒸気機関車に供給する石炭の質の悪さに苦労する機関士のセリフがある。
終盤には電気機関車や電車も現れ、30年の時の流れを表現している。
それにしても、約90分の映画で30年分も歳を取るにもかかわらず、俳優陣の演技が見事だ。
まるで30年間ずっと撮影し続けたかのように見えてしまう(予告編によると撮影は2年間にわたったそう)。
アルバムをめくりながら、長い歳月を振り返ったような感覚になる。
ちなみに三國連太郎は、同作品に出演する2年前、老人を演じるために歯を10本抜いたというエピソードがある。
この作品でもそれが役に立ったようだ。
主人公以外の配役では、浩造の次男に注目。
なんと若かりし頃の高倉健だ。
新人鉄道員を演じ、花形列車の151系ビジネス特急「こだま」を運転する。
この若い”健さん”が後年、『新幹線大爆破』で犯人役となり、北海道の小さな駅を描いた映画『鉄道員(ぽっぽや)』(1999年)の主人公となるのだ。
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