読む鉄道、観る鉄道 (14) 『皇帝のいない八月』 - ブルトレブームの子供たちを怖がらせた陰謀物語
列車での場面はおもに石森の視点で描かれる。
石森役の山本圭は、『新幹線大爆破』でテロリストを演じたが、今回は正義の側。
じつは彼、この作品の監督を務めた山本薩夫氏のおいとのこと。
清純派のイメージが強い吉永小百合は、この作品で影のある大人の女性を演じた。
「サユリスト」にとってショッキングな場面もある。
藤崎の盟友、東上役に山崎努。
東上と藤崎が向かい合うシーンは胸が熱くなる。
若手俳優として、藤崎の部下役に風間杜夫や永島敏行もいる。
事件に迫る新聞記者には、現千葉県知事の森田健作。
さらに、『喜劇 急行列車』で「さくら」の車掌を演じた渥美清が、この作品では乗客として出演し、笑いを誘う。
当時は、「寅さんがクーデターに巻き込まれた」と話題になったらしい。
乗客のひとりで、恋人といちゃつくかわいい女性を演じたのは泉じゅん。
日活ロマンポルノの大人気女優で、現在は”毒舌料理人”こと結城貢氏の奥様だそうだ。
石森の妻役の香野百合子さんにも注目。
『ウルトラセブン』で美少女宇宙人「マゼラン星人」を演じ、その後、『太陽にほえろ!』で「殿下」こと島刑事の婚約者を演じたことでも知られている。