奥様はコマガール (60) 犬馬鹿の境界線と夫婦間のズレ
それは先にチーが述べた極端な犬馬鹿のことだ。
犬を愛することはおおいに結構だが、犬の食事を人間と同等か、あるいはそれ以上の豪華なものにしたり、犬の衣服に人間さながらの大金をかけたり、そういう度を超した溺愛はさすがに滑稽に見える。
ちなみに、芸能界屈指の愛犬家として知られる某ベテラン女優は仕事の現場に愛犬を連れてくることが多いらしく、あるスタッフがそれを注意したところ、激怒したという。
彼女は愛犬のことを犬だと思っていないため、「犬の連れ込みは禁止」という文言が気に入らなかったわけだ。
また、彼女は愛犬のことを名前で呼ばれないと不機嫌になる。
彼女にとって愛犬は犬ではなく、「〇〇ちゃん」という唯一無二の個体なのである。
話をチーに戻すと、彼女がそういう犬馬鹿の類ではないということが、僕にとっては非常にありがたかった。
犬(その他のペット含む)に対する価値観というのは、ともすれば人生観や宗教観にも通ずる重要な部分であり、男女のそれが大きく食い違うと、結婚どころではなくなってくる。
たかだか犬と侮ることなかれ。
かつて江戸幕府の犬公方こと第5代将軍・徳川綱吉が発した「生類憐みの令」