マネー小説 『Dekai! 出界!』 (7) 第1章(7)
「卓越した経済学者であるシュンペーターは言っています。
『資本主義を資本主義たらしめるものは、利潤追求でも市場機構でも私有制度でもない。
それは、信用機構である』と。
資本主義の発展にとっての金融の機能の重要性を喝破した名言だと思います。
バブル崩壊で不良債権処理に苦しむ銀行に公的資金を入れるまでは正しかった。
しかし、その後も日本政府は規制と監督を強化し、各銀行の経営の自由度を極限まで奪ってしまった。
銀行を国家管理に置く状態を常態化させてしまったのです」「それは今のユーロ圏にも、当てはまりませんか?」「その通りです。
ですから私は、世界経済全体の今後に対しても大きな懸念を持っています。
日本について、続けてよろしいですか?」女性インタビュアーは、ふたたびうなずいた。
「日本は、この誤った舵取りために自由闊達な信用創造が起こらない経済構造になってしまいました。
資本主義国として成長の骨格を失った。それだけではありません。
日本は世界最速で少子高齢化社会に向かっています。
絶対的な労働力は激減しているのです。
『モノづくり大国・日本』などと言っていますが、人がいなければモノは作れない。