マネー小説 『Dekai! 出界!』 (7) 第1章(7)
そんな国に将来の成長は望めません」柏木はTV局を出て、チューリッヒの古い石畳の街並みを眺めながら歩いた。
〈かつて日本を占領し統治した米国政府の幹部は『日本はこれからスイスのような国を目指すべきだ』と言った。
日本が経済大国という旗印を降ろさなくてはならない今でこそ、そう言えるのだが……〉柏木は訪れるたびに、スイスという国の不思議さを考えさせられることになっていった。
<永世中立国>という存在の意味と強さを。
〈日本の弱小政党は『憲法九条を持つ以上、日本は非武装中立国となるべきだ』と馬鹿の一つ覚えのように力説しているが、幼稚でまったく世界の本質を分かっていない。
国と国とのエゴが剥き出しにされている今の世界情勢で日本がどのように生き残っていけるか。
本当の意味で、したたかに生きる手だて。
それを考えられない日本は、ダメだ〉柏木はスイスの<したたかさ>に気がついていた。
それはゾッとするような現実だった。
【拡大画像を含む完全版はこちら】