すべての服がすこしずつ大きいこの世界を、1日でも多く好きでいたい
だったかな、でも、ほとんど同じことを中1のときに、文芸部の顧問だった金子先生にも言われたことがある。
合唱コンクールで、朝の会で、人権作文の発表会で、「人前にがて?」とサエちゃんや金子先生やそうじゃない誰かに聞かれ続けて、聞かれるたびに体がこわばって、指先と肩を中心に、意図しないふるえ方をした。目が悪くなってぶ厚い眼鏡をかけ始めたのはもっと前のことだったっけ、やっぱりもういろんなことが思い出せない。
ただ、気がついたときには他人からの視線が怖くて、電車通学もプリクラを撮るのも人前で食べるお弁当も、ぜんぶがだめになってしまっていた。そんな状態は調子のいい日と悪い日の波を腹痛みたいに繰り返しながら、20代前半まで続いた。
おしゃれをするのが嫌いだったというわけではない。10代の頃は友だちとラフォーレ原宿や109(や、母と地元の板橋イオン)に行ったりもしたし、そこで当時エビちゃんの影響で流行っていた小花柄のスカートを買ったり、ときどきは冒険してセシルマクビーでギャル服を買ったりもした。ただ、友だちと服を見ながら華やかなファッションビルを歩いているときの純粋なうれしさと、試着室の鏡で自分の姿を見たときの「こんな似合わない服を着ているのを見られたら笑われる」