すべての服がすこしずつ大きいこの世界を、1日でも多く好きでいたい
……とかいって本当は私にそう言ってきた人のことはみんな覚えているのだけど、そんなくだらない呪いの話は今さらしたくない。
体が小さくて気弱そうに見えることがどうやら特定のジャンルの異性の興味を引くらしいというのは、(好むと好まざるとにかかわらず)女性の体を持って生まれてきた人なら早い年齢で気づくことだと思うし、なんとなく楽だからその層にアプローチしてみた時期も正直に言えばあった。その頃の自分のファッションの指針はただ一点、「モテそう」だった。ばかじゃないの。だから本当にこの話はもうやめる。
20歳を超えたある日、実家の近くを自転車で走っていたら新しくできた古着屋を見つけて、そこで極彩色の変な色のスカートを衝動買いしたことがあった。絶対にモテない、無難じゃない、なんなら友だちにだって笑われるかもしれないスカートをなんの考えもなく買ったその日から、なんとなく、もしかして服って似合わなくても着ていいんじゃないのか? と思いはじめた。同じ店に2度目に行ったとき、私は生まれてはじめてヴィンテージの服を買った。
店内をぼんやりと見てまわっていたら目についたそれは黒いノースリーブのロングワンピースで、タグに印刷された「40」