パッとした単色で、首元が開きすぎない、にせものの真珠や宝石はいらない、安っぽいレースもいらない、艶めかしくないはりのある生地、胸の下からふわっと広がるAライン、袖はポンッ! とパフスリーブになっている。そんなワンピース、絵本にしか存在しないのではなかろうか。思い描こうとするワンピース像は、8歳くらいの女の子が書くお姫様の絵のそれである。
周りのかわいい同級生たちを“量産型女子大生”などと小馬鹿にしているが、量産型なのではなく単純に流行りのもので、わたしが流行りに乗れていないだけなのだと薄々わかっている。「普通の」ワンピースと言っておきながら、世間の普通のワンピースにノー! と叫ぶわたしは一体何者なのか。
「どのワンピースにもね、覇気がないのよ」と声が聞こえる。ワンピースを探しつづけているうちに、いつの間にかわたしの頭の中に女王が鎮座している。「ワンピースは着る盾、着るたいまつ、着る花びら、着る風、着る塔よ。
どれもつまんないワンピースばっかり、覇気がないのよ」
「女王様、お言葉ですが」
「なによ芋っこ娘」
「覇気があるワンピースもあるにはあるのですが、高いんです」
「働きなさい!」