「昔はこういうワンピースが多かったのに、最近はね」と口々に言われ、わたしの中にいるワンピースの女王は高齢女性である可能性があるな、と思った。
そしてなによりも、「緑のワンピースの子」と呼ばれるのはとてもうれしい。わたしは「ワンピースの子」と呼ばれるために、これからもなるべくワンピースを着ようと決め、それから年に3着はワンピースを買った。1着は生地にはりのある式典用のもの、もう1着は百貨店に買い物に行くときに着るような「きちんとした私服」用、もう1着はいつでもすぐにコンビニに出られるようなシンプルなもの。クローゼットのなかのワンピースコーナーは年々増えて、眺めるたびににんまりとする。友人からワンピースの相談を受けることが増えた。誰かがワンピースのことを考えたとき、一緒にわたしのことを思い浮かべてくれる日が来たなんて!
ある日、テレビに出ている商店街の魚屋さんのおじさんが「ハッと哲学」という持論を提唱していた。「何においてもハッとしないとだめなんだよ、恋でも仕事でも、ハッとしないと結ばれねえ」。
まさにわたしがワンピースを好きなのは、ハッとするからだと思った。購入を決めるときにハッとして、願わくばそれを着るわたしに誰かがハッとしてくれたらうれしい。
着る盾、着るたいまつ、着る花びら、着る風、着る塔。ワンピースを着て、わたしは立つ。
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