「だめだ」と言われても手放せなかったものたちが、私の“自分らしさ”になった
持って生まれた身長や骨格はモデルという職業において“あるといいもの”のひとつであるだけだと思うし、なめらかで均一な肌やプロポーションも、あくまで自分の表現や持って生まれたものをよく見せるために磨くものに過ぎない。
今はたとえば、これまでの社会的な美の基準に照らしたときに“よい”とされてきたプロポーションや肌の質や色ではない、プラスサイズのモデルや、私もそうであるようにそばかすのたくさんあるモデルだっている。つまりそういったものは必要条件というよりは、求められるひとつの指針のようなものというだけである。
では、ファッションモデルをファッションモデルたらしめる絶対条件は何かと言えば、“着る”ことについてどこまで真摯に向き合っているかだと私は考えている。ファッションモデルは服を表現することこそが仕事であり、着る対象とどこまで向き合うことができるか、それが表現において如実に現れると実感しているからだ。
もしもファッションショーで急にサイズが大きすぎるものを着なければならないことになったら(実際はフィッティングを経て本番に至るのでそのようなことはあまりないが)、脇を締めポケットに手を入れて少し布をキュッと押さえてみようとか、逆に空気をはらんで布が動き、服と体がお互いにより美しく見えるよう動いてみようなどと、自分に合わせて着こなすためにとっさに考えて実践することができる。