作家・筒井康隆に魅せられて【TheBookNook#11】
1.『残像に口紅を』
私が14歳の頃、初めて出会った筒井先生の作品がこちら。一章ごとに使える文字がひとつずつ消えていき、それと共に小説世界のその文字を含むものも消えていく感覚はありながらも、記憶は確実になくなってしまうといういかにも実験的な物語。
難解に聞こえるかもしれませんが、そこはさすがの筒井先生。文字のみの小説なのに文字が消えていくのを感じさせないほど見事に物語が構成されています。
正直、物語としてスラスラ読める作品ではないかもしれませんが、最後の“あとがき”ならぬ“調査報告”にある学術論文のような解説を読み終え本を閉じた後、この上ない高揚感に包まれました。言葉のプロである“作家”という仕事と、描かれていない物語の背景に深く興味をもち、これ以降、私は本を読むのが一段と好きになりました。
2.『モナドの領域』
河川敷で女性の「美しい」片腕が見つかるところから始まる本作品。前知識なしで読んだため、最初は著者久しぶりのミステリー小説かなと期待していたら、唐突に素領域理論の“神”が登場し……。なるほどそうきたかと期待を大きく上回る筒井康隆ワールド全開の展開へ。
書かれている内容についてしっかりと味わうためには哲学に対する基礎知識が必要な表現も多く、私のなかでかみ砕けない部分もありましたが、不思議と読みづらさは感じず、頭をフル回転させながらページを捲る時間さえやけに心地よく感じました。