連載記事:母が重たい娘たち

母との関係が苦しい。娘の気持ちを母はわかってくれるのか?【母が重たい娘たち 第2回】


■母と娘の話は、DVと構造が同じ

母が重たい娘たち

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信田先生:このような母と娘の関係性は、DVと重ねると構造がよくわかります。

DV夫たちは、妻が「もう一緒に暮らせない」と伝えると、「話せば、わかる。コミュニケーションをとろうよ」と、100人が100人とも言うんです。妻が「そんなの無理」と言うと、「自分がコミュニケーションをとろうと言っているのに、あいつは話にのってこない」と、責めます。この構造と、母の「話し合いましょうよ。コミュニケーションとりましょうよ」は、同じなんです。

でも、その時点に至るまでに、妻はDV夫に対して、さんざん「コミュニケーションをとりましょう!」と、言ってきました。それに彼らはまったくのらないで、暴力を振るってきたんです。


それと同じで、娘はこれまで理を尽くして、さんざん話をしてきたのに、母は聞く耳をまったく持っていなかった。それでいて、「娘が自分から離れるかも!」という強い危機感を感じた段階で、やっと「コミュニケーションをとりましょうよ」と言ってくるのは、あまりにも勝手だと思います。

―娘なりに、ずっと母とコミュニケーションをとろうとしていた訳ですもんね。

信田先生:そりゃ、そうですよ! 

A子さん:私なりのコミュニケーションを、母に対してずっと、やってきて。「こう言ったら、母は、こう言ってくる」というのもわかります。「私がこう言ったら、母はこういうフレーズを言うだろう」というのまでわかると、何かを言う気が失せてしまうんです。

信田先生:私も、長年カウンセラーをやっていますから、「これを言ったら、こう返ってくる」というのはわかりますよ。だからこそ、「わかってもらおう」とか、「伝えよう」と思ってはいけないんです。
それをやると、必ずしっぺ返しが娘に返ってきて、娘たちの自滅につながります。

■「私、典型的だ」と自覚できれば大丈夫!

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A子さん:先生の本を読んで、「こんな本がある。これ、私のことだ!」と、感じました。私は、先生の本の典型的な読者なのだと思います。

信田先生「私、典型的だ」とわかるだけでも、いいですよね。毒親をテーマにした本がまだなかった頃は、当事者の方たちは、「こんなヒドイことを考えるのは、世界で自分一人だけだろう」と思っていたのですから。ご本人としては、一人で抱えるしかなくて、もっと大変だったんです。

けれども、最近は本屋さんに行けば、こういう本がたくさん出ています。
「私だけじゃないんだわ!」とわかるのは、すごく大きいことだと思っています。私は「毒親」という言葉を自分では使いませんが、緊急対応的に使う分には良いと考えています。「うちの母は、毒親だったのか」と定義できれば、娘側の肩の荷がおりるというか。

A子さん:先生のご本を読んで、「そうだよね。そうなんだ。やっぱり、そうだったんだ」と、本当にホッとしました。

■母との関係に苦しむ女性の「出口」には、2つの側面がある

信田先生:でもね、一時的に肩の荷がおりたとしても、母と娘の関係は、ずっと続きます。

私がカルチャーセンターで母娘問題の講座をするとき、聴衆の中に、60代の方が必ずいらっしゃいます。
当初、60代の方は「母親」という立場で話を聞きにいらしていると思っていたのですが、違いました。「娘」として、来ているのです。いまは90代でも、お元気な方はたくさんいらっしゃいます。60代になった方でも、「母が原因で、鬱になりました」という方は、普通にいらっしゃるのです。

「毒親」という言葉を使うと、どうしても、「自分を守る」という発想になります。緊急対応的には、毒親から自分を守るために、母を「捨てる」「切る」といった外科的な処置も効果はあります。

けれども、最終的にはこうした外科的な処置ではなく、もっと俯瞰(ふかん)した視点で考えてみないと母からの本質的な脱却はできないんです。前者は極めて具体的な方法論であり、後者は娘たちが自分の足元の土台をしっかりと固める作業です。
母との関係に苦しむ女性の「出口」には、この2つの側面があることを知っておいて頂きたいですね。

次回は、母と娘の関係に苦しむ女性の「外科的緊急処置」について
信田先生に教えていただきます。
■今回、取材を受けてくださった信田さよ子先生の最新作
『母が重くてたまらない・墓守娘の嘆き』『母・娘・祖母が共存するために』(信田 さよ子)
『母・娘・祖母が共存するために』(¥1,512(税込)/朝日新聞出版)
子育て中にママにこそ、読んで欲しい!
母娘問題の第一人者が書いたメルクマール(指標)

信田 さよ子さん
臨床心理士。原宿カウンセリングセンター所長。駒木野病院、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室を経て1995年に原宿カウンセリングセンターを設立。アルコールなどさまざまな依存症、摂食障害、ドメスティック・バイオレンス(DV)、子どもの虐待などに悩む本人やその家族へのカウンセリングを行っている。著書に『母が重くてたまらない』(春秋社)、『アダルト・チルドレンという物語』(文春文庫)、『さよなら、お母さん』(春秋社)『タフラブという快刀』(梧桐書院)『母からの解放 娘たちの声は届くか』(ホーム社)など。

読者アンケートにご協力ください (全4問)

Q.1 実の母親との関係性で悩んだことはありますか? (必須)

Q.2 Q1 で「ある」と回答した方に伺います。悩んだ内容で当てはまるものを教えてください。 (複数選択可)

Q.3 年齢をお聞かせください (必須)

Q.4 「私の母はこんな毒親でした」「毒親との付き合い方」「もしかして私も毒親?」など、「毒親」にまつわるエピソードがあればお聞かせください。 (最大1000文字)

 

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