『グリンチ』『シュガー・ラッシュ』現実に子どもが直面する問題を骨太に描く

年末年始を含む冬休みシーズンのファミリー・ムービーの定番は、やはりアニメーション映画。今年は『グリンチ』『シュガー・ラッシュ:オンライン』という大注目作がスタンバイしています。

目次

・これまで描かれなかった子どものリアル問題を描く
・謝る大切さを教えてくれるグリンチ。大人はどうする?
・グリンチが描く、今の世界に対する痛切なメッセージ
・自分の想いは相手のため?『シュガー・ラッシュ:オンライン』
・ささいないたずらが「いじめのタネ」になる

『シュガー・ラッシュ:オンライン』12月21日(金) 全国公開

『シュガー・ラッシュ:オンライン』©2018 Disney. All Rights Reserved.


かたや子どもたちに大人気のキャラクター「ミニオン」でおなじみのイルミネーションの最新作で、かたやディズニーの最新作。否が応でも期待が高まりますが、どちらもその期待を裏切らない。もう一つ言うと、今の子どもたちに見て、考えてほしい問題の含まれた内容になっています。

■これまで描かれなかった子どものリアル問題を描く

『グリンチ』と『シュガー・ラッシュ:オンライン』ですが、ひと言でいえば単に楽しいだけでは終わらない作品といっていい。どちらも、親としてはなかなか言葉で説明できないメッセージを子どもたちに届けてくれる内容になっています。

しかも、それは従来のアニメーションがよくテーマにしてきた「夢」や「希望」の大切さといったことではありません。
これまで子ども向けアニメーションで正面から語られることの少なかった、今まさに子どもたちが実生活で直面しているであろう友人関係や親子関係の問題が、物語の中に大きなテーマとして組みこまれ、大切なメッセージを伝えます。

魅力的なキャラクターや美しいアニメ映像にももちろん目を奪われて、一瞬見落としてしまいそうになるのですが、そのストーリーは今の時代をまるで反映させたかのような内容で、中身はじつに骨太です。

■謝る大切さを教えてくれるグリンチ。大人はどうする?

『グリンチ』12月14日 (金) 全国ロードショー!!

©2018 UNIVERSAL STUDIOS


まずはじめに『グリンチ』は、世界で愛される絵本作家、ドクター・スースの原作の映画化です。主人公の人里離れた洞窟で愛犬のマックスと暮らしているグリンチ。ひねくれ者の彼は村の人々に意地悪なことばかりをしています。

そんな彼は人々がみんな楽しそうで一緒に過ごすクリスマスが大っ嫌い。そこで、プレゼントからツリーまでクリスマスに関わるありとあらゆるものを、クリスマス・イブの夜に村中の家から盗んでしまおうと思いつきます。


詳しくは明かせませんが、そのなかで、グリンチはひとつ改心します。みずからの過ちに気づき、深く反省するのです。それに気づかせてくれるのが、村の少女、シンディ・ルー。

グリンチはあることから彼女の“サンタへのお願い”を知ります。じつは彼女、自分のためのプレゼントもクリスマスのごちそうも望んでいない。彼女がサンタにお願いしたいのは、「いつも一生懸命働いて、なんだか最近、ちょっとお疲れ気味のママの幸せ」だけ。

そのとき、グリンチは気づくのです。「クリスマスは独り占めするものではない。
みんなで幸せを分かち合う。誰かの幸せを願うことなのだ」と。さらに自分がクリスマスを嫌いな本当の理由にも気づきます。「本当はクリスマスが嫌いなのではない。あるトラウマから、クリスマスを誰とも祝えない、ひとりぼっちの自分が嫌いなのだ」と。

これまで目をつぶってきた自分の嫌な面と向き合うグリンチ。そして、彼は最大の勇気を振り絞って、自分のしたことを正直に話し、みんなに「ごめんなさい」の気持ちを伝えます。

このグリンチの行いから、「謝ることの勇気」「人の言葉に耳を傾けること」など、子どもが学ぶことはきっと多いはずです。
また、なにか最近、謝罪会見といいながら、言い逃れしたり、話をはぐらかしたりといったいい大人の悪あがきを目にすることが多いのではないでしょうか? そういう意味で、グリンチの潔い姿には、大人も見習うべきところがあるといっていいでしょう。

■グリンチが描く、今の世界に対する痛切なメッセージ

『グリンチ』12月14日 (金) 全国ロードショー!!

©2018 UNIVERSAL STUDIOS


もうひとつ触れておきたいことがあります。それはシンディ・ルーをはじめとする村の人々の厚意です。悪いことをしたことに気づくグリンチですが、悪いことをしたことに変わりはありません。普通ならばみんなからそっぽを向かれても仕方がない。

でも、シンディー・ルーは、グリンチをパーティーに招待します。グリンチがパーティーにいくと、村の人々も何事もなかったかのように彼に接します。つまり、悪いことをしたグリンチを大きな心をもって受け入れるのです。


ここに込められたメッセージこそが本作の最重要ポイントといっていいかもしれません。
いま、世界では仲間以外は認めない。自分とちょっとでも違う人間は受け入れない。そんな排他主義の意識が社会で強まってきている。そのことを危惧するように、本作は他者との協調性の重要さと、思いやりの心の大切さを唱えます。それは大人、子ども関係なく、いろいろと自分の身の回りの人間関係について考える機会になることでしょう。


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