戦時中、保母が挑んだ「疎開保育園」。今、子どもを守るため何ができるのか

目次

・“子どもの命を守る”強い意志が生んだ疎開保育園
・子育てにおいて、立場の違う大人が必要となるワケ
・“心の戦い”を描くことで浮かぶ、目に見えない残酷さ
・戦争の実態と保母たちの思い、子どもの目にはどう映る?
戸田恵梨香、大原櫻子W主演『あの日のオルガン』

©2018「あの日のオルガン」製作委員会


戸田恵梨香大原櫻子W主演の話題作『あの日のオルガン』が、2月22日(金)に公開されます。

時は太平洋戦争末期。迫り来る空襲から逃れるべく、日本初の「保育園児の集団疎開」に挑んだ保母たちの実話を描いた物語です。

多くの困難に立ち向かう彼女たちのたったひとつの願いは“子どもの命を守ること”。そこには、現代を生きる私たちが知るべき真実や思い、葛藤が詰まっていました。

■“子どもの命を守る”強い意志が生んだ疎開保育園


戸田恵梨香、大原櫻子W主演『あの日のオルガン』

©2018「あの日のオルガン」製作委員会


1944年。東京・品川では、空襲警報が響けば防空壕(ぼうくうごう)に避難する生活が続いていました。

政府は、子どもたちを「学童疎開」として地方へ集団疎開する措置をとりましたが、そこには保育園に通う幼児たちは含まれていませんでした。そこで立ち上がったのが、戸越保育所の主任・板倉楓(戸田)ら若き保母たち。子どもの命と、文化的な生活を守るため、日本初の「疎開保育園」を決意するのです。

そうはいっても、当然、一筋縄ではいきません。「幼い子どもたちを手放したくない」という親と「子どもの命だけでも助けたい」という親の意見は真っ二つ。
戸田恵梨香、大原櫻子W主演『あの日のオルガン』

©2018「あの日のオルガン」製作委員会


大切な命だからこその思いが交錯するなか、「子どもたちを守りたい」一心で、楓ら保母が、53人の幼児を連れた「保育所疎開」を実現させるところから物語は始まります。


■子育てにおいて、立場の違う大人が必要となるワケ

戸田恵梨香、大原櫻子W主演『あの日のオルガン』

©2018「あの日のオルガン」製作委員会


疎開先は、埼玉にある荒れ(ボロ?)寺。ふだんでも大変な子ども相手の保育。親元から離れた疎開先で暮らす、つまりは24時間休む間もなく保育するのだから、なおさらです。おねしょトイレ食事お風呂と、次から次へと現実的な試練が降りかかります。

それらの困難をき然とした態度で乗り越えようとリードするのが、戸田恵梨香演じる板倉楓。「怒りの乙女」と称される、後輩保母からの信頼も厚いしっかり者です。かたや大原櫻子演じる野々宮光枝は、子どもたちととにかく楽しく笑って過ごす天真爛漫(てんしんらんまん)な新人保母。

戸田恵梨香、大原櫻子W主演『あの日のオルガン』

©2018「あの日のオルガン」製作委員会


物語では、2人の対比がとにかく鮮やかに描かれています。大黒柱として子どもたちを守ることに必死な楓と、オルガンを弾きながら音楽を楽しみ、子どもと同じ目線で遊ぶ光枝。同じ保母という立場でありながら、その役割は大きく違っているのです。

そして、そのどちらも子どもたちにとっては欠かせない存在。楓と光枝のかみ合わないやりとりを見ていると、クスッと笑わせられると同時に、人の生き方に正解はないこと、また人はひとりでは生きられないこと、だからこそ支え合いが必要なこと…ついつい忘れてしまうたくさんの“大切なこと”を思い出させてくれます。

立場が異なったとしても「子どもを守り成長させたい」と考える大人が複数存在することが子どもにとっていかに大切なことなのか、過酷な時代背景のなかに、現代にも通じる問題が提議されています。

戸田恵梨香、大原櫻子W主演『あの日のオルガン』

©2018「あの日のオルガン」製作委員会


戦時中の日常を自然体で魅せる2人の表現力には驚くばかりですが、ほかの保母たちを演じるのも、佐久間由衣、三浦透子、堀田真由、福地桃子ら、1000人を超えるオーディションで選ばれた話題性、実力ともに十分な若手女優陣。困難な時代を生きる女性たちの熱い思い、そんな彼女たちが子どもたちを見つめる柔らかなまなざしに、だれもが引き込まれることでしょう。



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