連載記事:苦手が得意に変わる「片づけの最強メソッド」
「片づけられない女」だった私が、片づけ本を出すまでになったワケ【苦手が得意に変わる「片づけの最強メソッド」 Vol.1】
イラスト:花津ハナヨ
最近、さまざまな片づけのメソッドが巷にあふれています。「断捨離」に「ときめき」、「ミニマリスト」など…日本の片づけメソッドは、アメリカで一大ブームを引き起こすほどにもなっています。
しかし一方で、いろいろなメソッドを試してみたものの、うまくいかなかったという人も多いのではないでしょうか?
そんな方におすすめしたいのが、
『発達障害の人の「片づけスキル」を伸ばす本』。実は、著者の村上由美さんは片づけの専門家ではありません。本業は言語聴覚士で、主として発達障害や知的障害を持つ子どもたちやその家族を対象に、発達支援の仕事に20年近く従事しています。
そんな村上さんもASD(自閉症スペクトラム障害)を持つ発達障害当事者で、発達障害の特性としてよくあげられるように、以前は、本当に片づけが苦手だったそうです。本書には、そんな発達障害当事者ならではの工夫によって編み出された片づけのコツがつまっています。
一体どんな方法なのでしょうか? お話をうかがってきました。
お話をうかがったのは…
村上由美(むらかみ・ゆみ)さん
言語聴覚士。上智大学文学部心理学科、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院(現・国立障害者リハビリテーションセンター学院)聴能言語専門職員養成課卒業。重症心身障害児施設や自治体などで発達障害児、肢体不自由児の言語聴覚療法や発達相談業務に従事。著書に『アスペルガーの館』(講談社)、『声と話し方のトレーニング』(平凡社新書)、『ことばの発達が気になる子どもの相談室』(明石書店)、『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本』(翔泳社)などがある。
■「片付けはしないとダメ?」片付けるメリット、片付けないデメリット
――以前の村上さんは、本当に片づけが苦手だったそうですが、どんなことがきっかけで片づけに目覚めたのでしょう?
村上由美さん(以下、村上さん): 私は30歳くらいまでは、片づけが大嫌いでした。実家で暮らしていた頃は、床一面にモノを散らかしていて、母によく「片づけなさい!」と怒られましたね(苦笑)。なぜ片づけなかったかと聞かれれば、そもそも、私自身が片づけの必要性を感じていなかったのです。
――散らかっている状態でも、村上さん自身には、特に支障はなかったのですね?
村上さん:「片づけなさい」と怒られて、嫌な気持ちになることばかりに気をとられてしまって…。
でも、さすがに自分自身も薄々わかっているのです。いつかは片づけなくてはならないということは。
それで部屋がどうにもならない状況になってから、年に2回くらい重い腰をあげて片づけるワケですが、そういう状況になってからの片づけはものすごく大変で…。とにかく、片づけに対して、ネガティブなイメージしか持てなかったのです。
――でも、「このままではマズイ」と、ある時気づいたのですよね?
村上さん:私の場合、私が片づけないことで、職場のほかの人が困る事態が発生して…。上司から注意を受けたことがきっかけでした。自分ひとりの問題ならともかく、他人の迷惑になるとわかった時点で、「こりゃ、片づけないとまずいぞ!」となったワケです。
――以前の村上さんのように、片づけが苦手な人には、「そもそも、その必要性を感じていない」という人も意外と多いように思います。
村上さん:そういう場合は、本人が我に返らないとなかなか難しいと思います。私もそれまで、「片づけ」は自分の好きなことができる時間を犠牲にしてやらなければならないこと、と思っていましたから。まるで、良いことと嫌なことをトレードオフするようなイメージ。
で、片づけで得られるメリットと、片づけないままのメリットを比べた時、片づけないままでいるメリットの方が、私の中では大きかったのです。でも、それが一気に逆転して、デメリットが増えてしまったワケ(苦笑)。
また、最近よく思うのは、片づけって結局、他人との円滑なコミュニケーションのためでもあると思うのです。
――どういう意味でしょうか?
村上さん:きちんと片づけていれば、他人に用事を頼めるんですよ。
例えば将来、私に介護が必要になった時、ヘルパーさんに「〇〇は△△に入っているからお願いします」と頼めます。
ですが、もし家の中が、自分でも何がどこにあるのかわからない状態だったら伝えられませんよね?
よく「なんで片づけしなくちゃいけないの?」と嘆く人もいるのですが、片づけって、ゆくゆくは自分のためになるのです。結局、コミュニケーションのためのインフラなのです。