イラスト:ねここあんな。
妊娠・出産を通じて「もらえるお金」は、たくさんあります。大切なことは、それを「知っておく」こと。「知っている」か「知っていないか」。ここで、大きく差がつきます。
そのために必要なことは、「最新の情報」を「情報の源泉」からキャッチすることです。
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「最新版! 妊娠出産「もらえるお金」と「かかるお金」一覧」
■ひとりあたり42万円助成してくれる出産育児一時金
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▼出産育児一時金とは?
出産(正常分娩)は病気ではないので、健康保険は使えず、費用は全額自費負担となります。その代わりに出産費用の助成として健康保険からお金が支給され、その一時金のことを「出産育児一時金」といいます。
▼「出産育児一時金」のもらえる金額は、いくら?
「子どもひとりにつき42万円」が基本です。
<双子(多胎)の場合>
42万円 × 人数分
となります。加入している健康保険組合や自治体によっては、「付加給付金」を上乗せしてもらえる場合もあります。
▼「出産育児一時金」をもらえる人は、どんな人?
●自分が健康保険に加入しているか、夫の健康保険の被扶養者になっている
●妊娠4ヶ月(85日)以上で出産する人
流産・死産の場合も、妊娠85日以降であれば適用されます。
▼「出産育児一時金」の手続きの概要
健康保険制度から、産院へ直接お金を支払ってもらう「直接支払制度」が原則です。その流れをベースに説明します。
①支給を受ける健康保険を決める
「出産育児一時金」を、どの健康保険からもらうのかを決めておきましょう。選択肢としては次の2つです。
●自分の健康保険からもらう
●パパの健康保険の被扶養者としてもらう
②支払い制度を選択する
手続きの方法は「直接支払制度」「受取代理制度」「産後申請」の3つがあります。ただし、基本的には「直接支払制度」を使います。直接支払制度に対応していない産院の場合には、「受取代理人制度」を利用するようにします。
<「直接支払制度」の手続き>
「直接支払制度」の場合は、分娩予約から退院までの間に病院から説明があります。
その説明の内容を理解し承諾した上で、病院から渡される申請書に必要事項を記入するだけでOKです。
<「受取代理制度」の手続き>
「受取代理制度」を利用する場合には、出産前(出産予定日まで2ヶ月以内)に「出産育児一時金等支給申請書」(健康保険組合のホームぺージからダウンロードできる場合も多くあります)に必要事項を記入押印し、加入先の健康保険に提出します。
③出産後、差額を精算する
出産入院するときに、出産育児一時金の支給を受ける健康保険証を提示します。
●出産費用が出産育児一時金の支給額より多かった場合
退院する時に超過分を産院に支払う。
●出産費用が出産育児一時金の支給額より少なかった場合
差額を精算する。
▼出産育児一時金で差額を清算するには
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この流れは、「直接支払制度」と「受取代理制度」で異なります。
<「直接支払制度」の場合>
差額分は、分娩費・入院費の明細書(写し)と必要書類を公的医療保険の窓口に提出すると、約1ヶ月~2ヶ月半後に指定口座に支払われます。
<「受取代理制度」の場合>
提出済の書類(出産育児一時金等支給申請書『受取代理用』)に記入してある口座に差額分が自動的に振りこまれます。
◆ワンポイントアドバイス:産後申請する場合◆
出産ギリギリまで働いていて、ギリギリのタイミングで里帰りをするなど、直接支払制度の申請に間に合わない場合などは、「産後申請」を使います。その際の流れは次のようになります。
産院の窓口で出産費用をいったんは全額支払い、出産後に加入している健保に産後申請の書類を提出し、出産育児一時金を受け取ります。
産後申請の場合で、入院前に保証金が必要だったり、出産費用を支払うのが難しかったりするケースは、加入先の健康保険に出産費用の貸付の相談ができます。
▼「出産育児一時金」DATA
●申請のタイミング
【直接支払制度】分娩予約から出産までのあいだ
【受取代理制度】出産予定日の2ヶ月前以降
【産後申請】出産日の翌日から2年以内
●申請窓口
【健康保険・共済加入者】勤務先、または健康保険組合・共済組合
【国民健康保険加入者】市区町村の役所
●支給される時期
【直接支払制度】入院・分娩費用の支払い時
【受取代理制度】入院・分娩費用の支払い時
【産後申請】申請後2週間~2ヶ月後
■出産で会社を休んだとき支給される出産手当金
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▼「出産手当金とは?
「出産手当金」とは、産休中、会社からお給料が出ない場合、ママが加入している健康保険から支給される休業補償金のこと。
この場合の「産休中」とは、出産をはさんで、産前42日(多胎の場合は98日)・産後56日の期間をいいます。
▼「出産手当金」でもらえる金額は、いくら?
「日給(※1)の3分の2に相当する金額」×「産休した日数分」
給付日数は前述の産休中。予定日より出産が遅れた場合は、給付日数が長くなり、出産が早かった場合は短くなります。お給料が支払われている場合でも、その金額が出産手当金より少ない場合は差額が支払われます。
※日額:標準報酬月額÷30
(標準報酬月額とは社会保険料などを計算するためにお給料や交通費を含めた金額を47等級『健康保険の場合』に分けたもの。具体的な額が知りたい場合は、担当窓口に問い合わせするのが良い)
◆注意! 出産手当金の振込み時期
ここで覚えておきたいのは、出産手当金が振り込まれる時期のタイムラグ。
出産手当金は、産休中の生活のサポートとして支払われるお金ですが、指定口座に振り込まれるのは出産後、およそ3~4ヶ月後(※)。このタイムラグをあらかじめ理解して、産休中の当面の生活費はあらかじめ用意しておきましょう。
※産休明け(出産後57日) + 申請から振込みまで1~2カ月かかる
▼産休中は社会保険料の支払いが免除に
産休中は社会保険料(厚生年金と健康保険)の支払いが免除になります。雇用保険料は、給料の支払いがない場合は、負担もありません。ただし、前年度の所得にかかる住民税の支払いはあるので、ご注意を!
▼「出産手当金」をもらえる人は、どんな人?
<出産手当金の対象者>
勤め先の健康保険に加入している人が対象となります。
・正社員
・パートや契約社員
・アルバイト
ただし、原則として、産休後も仕事に復帰するママが対象。産休中のお給料が日額の3分の2以上出る場合はもらえません。
働いているママでも、自営業・自由業などの国民健康保険の人、また会社員でも、健康保険が国民健康保険の場合は残念ながらもらうことはできません。
▼「出産手当金」の手続きの概要
①産休前に出産手当金の申請用紙を入手
出産手当金をもらうためには「健康保険出産手当金支給申請書」への記入・提出が必要となります。この書類には出産した病院の医師の証明が必要なので、産休前に用紙を入手しておくと手続きがスムーズ。申請書は各健康保険のHPからダウンロードできることも。
②産院で医師に必要事項を記入してもらう
赤ちゃんが生まれたら、担当の先生に必要事項を記入してもらいます。この時、文書料として数千円かかる場合もあります。
③産休明けに会社に必要事項を記入してもらう
「健康保険出産手当金支給申請書」には、勤務先の記入欄もあります。書類が完成したら、勤務先の健康保険担当者など、健康保険の窓口に提出します。
◆ワンポイントアドバイス:退職したママが出産手当金をもらえるケースもある◆
出産手当金は出産後も仕事を続けるためのママのための制度。けれども仕事を続けるつもりでも、出産を挟んでどうしても退職しなければならなくなる場合もある。
そんな場合、次の要件を満たしていれば退職するママでも出産手当金給付対象になる可能性がある。ただし、不要なトラブルを避けるためにも勤務先とよく相談しよう。
1)被保険者期間(健康保険に入っていた期間)が1年以上あること
2)退職時に出産手当金を受ける条件(※)を満たしていること
3)退職日当日に出勤していないこと (例えば、退職日当日に引き継ぎや挨拶のために短時間出勤すると要件を満たさないので注意が必要)
※出産日や出産予定日の前42日(多胎の場合は98日)以内、つまり産前休業が取れる期間に退職していて、かつ、退職日当日に出勤していない人
▼「出産手当金」DATA
●申請のタイミング
産後休暇が終了したのち、なるべく早めに
●申請窓口
勤務先の健康保険の窓口または健康保険組合
●支給される時期
申請から1~2ヶ月