連載記事:わたしの糸をたぐりよせて

夫との不穏、そしてすれちがってしまったワケ…ママに縛られない私が歩む先【わたしの糸をたぐりよせて 第12話】

わたしの糸をたぐりよせて

わたしの糸をたぐりよせて

「いつか自分のブランドを出したい」。そんな想いを抱いていた学生時代。でも希望の就職先にはことごとくふられ、入社できた会社で出会った亮。結婚して、子どもが生まれて、私は幸せになれると思ったのに…。私の…

わたしの糸をたぐりよせて
前回からのあらすじ
息子の幼稚園のおゆうぎ会。これまで威圧的な態度を取ってきたカオルが、衣装係に立候補する。しかしその衣装づくりは困難を極め…。そこで友里と上田が取った行動とは…。

ママ友トラブル決着の行方…それはまさかの幼稚園イベントで起こった

●登場人物●
立花友里:都会で就職し結婚したが、夫・亮の転勤で地元の街に戻ってくる
:友里の夫。友里から告白してつきあうように。息子の悠斗を妊娠して以来、夜の生活がない
イナガキ:友里の幼なじみ。小学校~高校まで一緒だった。現在は人気デザイナー。
上田:悠斗と同じ幼稚園に通うママで、うさぎ組のクラス委員長
マキ:悠斗と同じ幼稚園に通うママ友で気が合う
カオル:悠斗と同じ幼稚園に通うママ友で、友里を配下に置こうと考えてる

※このお話はフィクションです


■思ってもみなかった事態が動き出す!

幼稚園のおゆうぎ会の衣装を作ったことで、クラスのママさんから依頼された子どもの洋服。そのオーダーは“ちょっとしたお呼ばれに着ていけて動きやすく、洗濯もしやすいもの”だった。

なら……と、偶然見つけた小花柄の生地で頭からかぶるタイプのシャツワンピースを作ってママさんに渡した。ママさん以上に喜んだのはお子さんのほうで、「マイブームになってしまい毎日着たがって手を焼いちゃってます」とうれしそうに話してくれた。


「製作費も…」と言っていただいたが、プロではないので材料費だけいただいたのだが…。このママさんが洋服をインスタにアップしたことで、意外にも「私も作ってほしい」という声があがり、そのママさんのお友だちからもお話が来るようになっていった。

そして偶然にもそのなかに有名なインスタグラマーさんがいたことで、一気に反響が拡大。自分ではそんな状況についていかれないでいるときに、マキちゃんの家に呼ばれた。上田さんと3人で野菜スイーツを食べながらお茶を飲んでいたとき、マキちゃんから思ってもみなかった提案をされた。

「ねえ、いい機会だからネットショップを開いてみたら?」

「それ賛成だわ。今みたいに頼まれて材料費だけで作っているのは、あなたにとっても良くないと思うわ。お金をもらうことで、『もっと良いものを』って気持ちも出てくるし、何よりあなたの洋服を大切にしてくれる人にきちんと届けられる」

と、上田さんが後押しをする。


私抜きで盛りあがっていく2人に、ちょっと戸惑っていた。けれど……。

デザイナーになりたかったんでしょう? あなたが目指す服作りとは違うかもしれないけれど、この状況はチャンスだと思うの。

もちろん、あなたも甘えた仕事ができないっていう厳しさも味わうかもしれない。でもね、個性を思う存分発揮することができるわ」と言う上田さんの言葉に、私もワクワクし始めていた。でも私がまた働くことを亮くんはなんて言うんだろう。

とはいえ、私にはウェブサイトに関する知識はまったくない。とりあえず悠斗を寝かしつけたあと、スマホでぽちぽちとハンドメイド作家の検索をしてみると、私でもネットショップを開けそうなサイトがあることがわかった。


(これなら……私にもできる。でも、亮くんに反対されたらどうしよう)

最近、亮くんとまともに話をしていない。説得する以前にコミュニケーションが成り立ってない。今さら、話なんてできるのかな。そんなことを考えていたら、亮くんからLINEが入った。
ついに夫が真実を告げる…そして母親になってあきらめてばかりだった私は
「今日、紹介したいヤツがいるから。連れて帰る。急でごめん」

……いよいよ、その日が来たのかなぁ。

不安で心臓がバクバクしながらも、私は亮くんの帰りを待っていた。



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