家事に育児に仕事にと、分刻みですべてをこなす働く子育て世代のパパ・ママにとって、家族の1人でも体調を崩すことは死活問題。
家族の笑顔を守るために自分自身はもちろん、
パートナーや子どもの健康管理はとても大切です。
▼子どもが発熱すると、ほんともう大変~!
(えい子さんの場合)
バランスのよい食事に加えて感染対策に力を入れたり、いざというときのために常備薬を切らさないよう注意しているというパパ・ママも多いかもしれません。
けれど、
よかれと思って何気なくやっていたことが、大切な人の未来に悪影響を及ぼしている可能性も。
じつは風邪などの際に自己判断で抗菌薬(抗生物質、抗生剤ともいう)を服用することによって、症状が悪化したり、将来的に薬が効かなくなることがあるんです。
これを「薬剤耐性(やくざいたいせい)」(通称:AMR)といい、いま世界的に深刻な問題となっています。
データによると、2050年には薬剤耐性による死亡者数ががんによる死亡者数を超えるとも言われているんです。
(国立国際医療研究センター病院
藤友先生)
では、薬を服用する機会も多い子育て世代の私たちは
どんなことに気をつければよいのでしょうか?
国立国際医療研究センター病院の
藤友先生にわかりやすく解説していただきました!
【目次】・クイズ-1 子どもが風邪をひいたとき…
・クイズ-2 症状が改善されたので…
・薬剤耐性(AMR)をやさしく解説!
風邪に抗菌薬(抗生物質、抗生剤)は効く?
\クイズ その1/
風邪をひいたので、以前病院で処方された「抗菌薬」を早めに服用した。これは ◯ か ✖ か?
答え: ✖
風邪に「抗菌薬」は効きません
「風邪はほとんどの場合、
ウイルスが原因となるため、
細菌による感染症の治療に使用される抗菌薬は効果がありません。
それどころか、抗菌薬を不適切に飲んでいると
「薬剤耐性菌」ができてしまい、
本当に抗菌薬が効いて欲しいときに効かなくなる可能性も。また、抗菌薬は腸内環境を整えている菌も攻撃してしまうので、
下痢などの副作用が出る場合があるんです。
\これ、絶対やっちゃダメ!/子どもが急に発熱したので、自宅に残っていた抗菌薬を飲ませた
風邪っぽいけど忙しくて病院に行けないので、以前処方された抗菌薬を飲んだ
喉の痛みがあったので、子ども用に処方された抗菌薬を倍量で飲んだ
…など、緊急事態に慌ててやってしまいがちな
これらの行動は、絶対にしてはダメですよ!
くしゃみや鼻水、咳や発熱などの風邪の症状は、体が
ウイルスに反応し戦っている証拠。医師に処方された薬や、薬局で売っている風邪薬はこのツラい症状を和らげるもので、原因であるウイルスをやっつけるわけではありません。
風邪を治すために必要なのは、体の
免疫力や十分な休息。日頃から手洗いや咳エチケット、ワクチン接種で感染対策をし、栄養バランスの整った食事と運動、十分な睡眠で
免疫力をつけておくことが大切です。
処方を受ける場合は、どんな薬なのかを把握し、用法用量をきちんと守って服用しましょう。自分や子どもの体に直接作用するものなのですから」(藤友先生)
\クイズ その2/
細菌性の病気と診断され、処方された薬を症状が軽くなったタイミングで飲むのをやめた。これは ◯ か ✖ か?
答え: ✖
指示通りに抗菌薬を飲み切らないと完治しません
「医師に処方された抗菌薬を
指示通りに最後まできちんと服用することは、じつはとても大切なこと。
症状がよくなったからといって自己判断で飲むのをやめてしまうと、体内に残った病原菌によって症状がぶり返す恐れがあるんです。
また、症状が軽くなったからといって1日3回の処方を2回に減らしてしまうといった、
飲む量を変えてしまうことも危険な行為。中途半端な薬剤の濃度によって完全に死滅しなかった病原菌は、薬への抵抗力をつけ、
薬が効かない細菌が生まれてしまうことがあるんです。
このような
『薬剤耐性菌』が発生しやすい環境を作らないためにも、
抗菌薬は決められた処方を正しく服用するようにしましょう」(藤友先生)
薬剤耐性が原因で死亡…世界で推定127万人!
正しい知識を身につけよう!
病気が「ウイルス性」か「細菌性」かなんて考えたこともなかったし、なんとなく抗菌薬って万能な気がして、つい自己判断で飲んでしまっていました。
風邪に抗菌薬が効かないと知っている日本人は20%くらいなんです。誤った知識が薬剤耐性につながっていくんですよね。
じつは「薬剤耐性(AMR)」が原因で、世界で年間127万人もの人が死亡しているとも言われているんですよ。
[出典:Lancet.2022 Feb 12;399(10325):625-655]
えっ! そんなに…。多くの人に「薬剤耐性菌」ができてしまうと、将来的に抗菌薬が使えなくなるってことですよね?
そうなんです。このままの状況が続くと感染症の治療が難しくなって、死に至るケースも増えてきます。それだけでなく、抗がん剤の治療や手術が難しくなることにもつながるんです。
また、身近なところだと抗菌薬の乱用によって体の調子を整えてくれる菌まで殺してしまい、腸内環境が乱れやすくなるということも。せっかくの腸活も意味がなくなります。
抗菌薬について正しい知識を身につけて、未来の子どもたちの笑顔を守りましょう!
\まとめ/
薬剤耐性(AMR)問題、何がどう影響する?
▼「細菌性感染症」が治りにくくなる
抗菌薬を不必要に飲んだり、処方通りに服用しないことで「薬剤耐性菌」ができてしまい、抗菌薬が効きにくくなってしまいます。
将来的にはさまざまな医療の可能性を狭めてしまい、手術や抗がん剤治療に支障をきたすケースも。このままだと「使える薬がなくなってしまう未来」が子どもたちに襲いかかります。
\じゃあ、何に注意したらよい?/
1)抗菌薬の正しい知識を身につけること
抗菌薬は、細菌の感染症治療に使われる薬です。抗菌薬についてわからないことがあれば医師や薬剤師に相談しましょう。
☑ ほとんどの風邪はウイルスが原因。風邪に「抗菌薬」は効きません
☑ 抗菌薬は医師の処方が必要な薬です。自己判断で服用してはいけません
☑ 抗菌薬を処方されたら、指示通りの期間と量を守って服用すること
☑ 抗菌薬はあげたりもらったりしてはダメ! その人の状態に合わせて処方されています2)基本的な感染対策を徹底すること
病気にならないのが一番! そのためには「手洗い・咳エチケット」を徹底すること。食事や睡眠をしっかり摂って免疫力をつけることも心がけましょう。また、ワクチンで防げる病気はワクチンで予防しましょう。初めて知ることもありましたが、大切なことがよくわかりました! 藤友先生、ありがとうございました!
子どもたちの未来のために
親である私たちができること
毎日忙しいとつい忘れがちですが、家族みんなが笑顔で暮らせるのは決して当たり前なことではなく、
健康がベースにあってこそ。
薬剤耐性(AMR)というと専門的で少し難しいことのようにも感じますが、じつはとても身近な問題で、私たちが今からできることはたくさんあります。
まずは薬剤耐性に関する
正しい知識を持つこと、そして手洗い・咳エチケットなど日々の感染対策を徹底すること。子どもたちの未来のためにもぜひ関心を持つことから始めてみてくださいね。
薬剤耐性(AMR)をもっと知る
TVアニメ「はたらく細胞」で
薬剤耐性を学ぶ!
子どもたちの未来のために
薬剤耐性(AMR)をもっと知る
・動画で「薬剤耐性」をもっと知る >>
・「ウイルス」と「細菌」の違いとは? >>
・私たちができること AMR防止3カ条 >>
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国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター
イラスト:ちょっ子 文:佐々木彩子
※本記事に登場する人物とストーリーは、記事内容をお伝えする目的で作られたフィクションとなります