「等身大の救い」を描く、世界が注目する映画監督・呉美保【INTERVIEW】
一括りに『虐待』と言語化されることで、意味を限定してしまい、ある種の閉鎖感に繋がっています。グレーな部分、混ざり合う部分があるのが人間。だから、この作品が、一歩前に進めたり、救われるような感覚になれたとか、大げさじゃなく等身大の救いになれたら」と語る。
本作では、新米の小学校教師・岡野匡を高良健吾、娘に手をあげ、自身も親に暴力を振るわれていた過去のある母親・水木雅美を尾野真千子が演じる。登場人物の人生を演じる役者達とは、撮影前に脚本には書かれていないその役の人生を想像してもらい、監督と役について語り合う時間を持ったのだという。「その話し合いがあることで、群像劇ゆえに短い、一人あたりが登場する尺に、その人の持つ多面性を凝縮して描いていけるようになります」と呉監督。14年初夏、小樽で行われた約3週間のロケでも「役者の気持ちが切れないように、ロケで一気に撮影し、作品の世界観を凝縮させました」と振り返る。
12年に原作を読んだ時から、足かけ3年を経て制作された本作。
監督に映画ならではの魅力を問うと「まず、映画は物づくりに向き合う時間が長いですよね。陶芸のように、練っていく作業がすごく多いんです。