東京都美術館で「ティツィアーノとヴェネツィア派展」ルノワールも憧れた“画家の王者”日本初大規模展
つややかな肌を描き、イタリアの人々にこよなく愛されてきた花の女神を描いた作品である。単なる神話画というよりも女神に扮した娼婦の肖像、あるいは右手の薬指に指輪をはめていることから花嫁や結婚の寓意像とも解釈されている。
第2章 ティツィアーノの時代
1510年にジョルジョーネが没した後、ヴェネツィア絵画の覇者となったのはティツィアーノであった。ベッリーニやジョルジョーネに学んだ繊細な色彩の諧調と光の表現に、力強さと抑揚を加え、新しい絵画の可能性を切り開いていく。
その色遣いと様式にミケランジェロが脱帽したといわれる日本初公開作品《ダナエ》は、第2章でじっくりと観賞したい作品のひとつ。アルゴス王アクリシオスの娘であったダナエを描いた本作は、彼女が魅力的な裸体を惜しみなくさらし、金貨の混ざった黄金の雨を恍惚としたまなざしで見つめている。官能的な一場面を想像力豊かに描き出した、次世代にも引き継がれる名画である。
第3章 ティツィアーノからティントレット、ヴェロネーゼへ
ティツィアーノは長い画歴のなかで、次々と様式を変化させていった。
後年には、筆致の荒々しさが増し、光と影の対比を強調した表現へと移行。