「あ、雪村(ゆきむら)さん、ごめんね」
「いえ」
あれ、気のせいかな?今、睨まれた……?
◆
突然の告白
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週末のレストランは、予約をしていても待たされることが多い。誰にも邪魔されず有意義に過ごすには、個室が1番。
料理はシェフのおまかせコース、もちろんワインはペアリングで。
彼のどこが好きかと聞かれたら、絵に描いたような理想を叶えてくれるところなんだと思う。
「改めて、おめでとう」
「ありがとう。でもそれはプロジェクトが成功してから言って」
「相変わらず向上心が高いな。汐里(しおり)は」
ろうそくの火がロマンチックに揺れる。
「新実課長の厳しいご指導のお陰です」
「ふたりの時くらい”課長”は、やめろ」
「確かに、未だに変な感じ」
私より4歳年上の新実さんは、甘いマスクのせいか38歳にはとても見えない。
だけど、その中身は異例の速さで出世したエリート中のエリート。
高学歴、高身長、見た目の完璧さもあり、女性社員の憧れの的だ。
後輩の面倒見もよく、私を主任に引っ張り上げてくれた人でもある。