くらし情報『【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第1話)』

【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第1話)

その作業もあって、会社を後にしたのは午後10時頃。

途中のコンビニでお弁当とビールを買って、自宅マンションに着いたのは11時過ぎ。

エレベーターの到着を待っている間、我慢できずにビールのプルタブを開けた。

「雪村さんと新実さんが結婚……」
口に出してみて、なぜだか笑いがこみ上げた。

「変なの、おかしい、ふふっ」

そろそろ次のステージを意識してもいい?彼なら私の思いを尊重してくれる?

「勘違いもいいところ、バッカみたい」

今度は涙が溢れそうになって、冷たいビールの缶を瞼に押し当てた。

泣くもんか。こんなことで、泣いてたまるもんか。

「そうよ、私の涙は安くない」

3階でエレベーターを降りて、自宅玄関の鍵を開ける。
シャワーを浴びてご飯を食べたら、資料作りをしよう。気分が晴れない時は、仕事をするのが1番。

――――と、

玄関のドアを開けた瞬間、違和感を覚えた。それは何か、1歩足を踏み入れてすぐに分かる。

部屋の中がめちゃくちゃに荒らされているのだ。

嘘でしょ、空き巣?

その時、リビングの奥にあるベランダで人影が動くのが見えた。よりによって、人が弱っている時に……。

「冗談じゃない、ふざけんな!」

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