その作業もあって、会社を後にしたのは午後10時頃。
途中のコンビニでお弁当とビールを買って、自宅マンションに着いたのは11時過ぎ。
エレベーターの到着を待っている間、我慢できずにビールのプルタブを開けた。
「雪村さんと新実さんが結婚……」
口に出してみて、なぜだか笑いがこみ上げた。
「変なの、おかしい、ふふっ」
そろそろ次のステージを意識してもいい?彼なら私の思いを尊重してくれる?
「勘違いもいいところ、バッカみたい」
今度は涙が溢れそうになって、冷たいビールの缶を瞼に押し当てた。
泣くもんか。こんなことで、泣いてたまるもんか。
「そうよ、私の涙は安くない」
3階でエレベーターを降りて、自宅玄関の鍵を開ける。
シャワーを浴びてご飯を食べたら、資料作りをしよう。気分が晴れない時は、仕事をするのが1番。
――――と、
玄関のドアを開けた瞬間、違和感を覚えた。それは何か、1歩足を踏み入れてすぐに分かる。
部屋の中がめちゃくちゃに荒らされているのだ。
嘘でしょ、空き巣?
その時、リビングの奥にあるベランダで人影が動くのが見えた。よりによって、人が弱っている時に……。
「冗談じゃない、ふざけんな!」