「北崎……先生?」
不意に小学生くらいの女の子が声をかけてきた。
彼女の方を向いた大和を確認し、「やっぱり!」と嬉しそうに笑う。
「おー、れいなちゃん偶然だね。足の調子はどう?」
「もう走れるよ」
患者さんかな。
大和のことをすごく慕っているのが分かる。
しばらく話をする2人を眺めていると、れいなちゃんと目が合った。
「先生、この人って先生の彼女?」
幼いだけあって遠慮のないストレートな質問。
れいなちゃんのお母さんらしき人が、「こら、失礼でしょ」と窘める。
そんな親子に向かって、大和は、
「先生の大切な人だよ」
そう答えた。
あれは、どういう意味なんだろう?
大切な人というのは、家族のような存在だからだろうか?
それとも――。
水族館の中に入った後も、そのことがずっと頭の中でぐるぐる回る。
そのせいで気が付くと、大和とはぐれていた。
どこに行っちゃったんだろう?立ち止まり辺りを見回すが見つからない。
仕方なく進行方向に進んでみたものの、大和の姿はどこにもなかった。
「(……どうしよう)」
不安になった瞬間、腕を掴まれ引っ張られた。
「しおちゃん」