くらし情報『【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第5話)』

【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第5話)

「北崎……先生?」

不意に小学生くらいの女の子が声をかけてきた。

彼女の方を向いた大和を確認し、「やっぱり!」と嬉しそうに笑う。

「おー、れいなちゃん偶然だね。足の調子はどう?」

「もう走れるよ」

患者さんかな。

大和のことをすごく慕っているのが分かる。

しばらく話をする2人を眺めていると、れいなちゃんと目が合った。

「先生、この人って先生の彼女?」

幼いだけあって遠慮のないストレートな質問。

れいなちゃんのお母さんらしき人が、「こら、失礼でしょ」と窘める。


そんな親子に向かって、大和は、

「先生の大切な人だよ」

そう答えた。

あれは、どういう意味なんだろう?

大切な人というのは、家族のような存在だからだろうか?

それとも――。

水族館の中に入った後も、そのことがずっと頭の中でぐるぐる回る。

そのせいで気が付くと、大和とはぐれていた。

どこに行っちゃったんだろう?立ち止まり辺りを見回すが見つからない。

仕方なく進行方向に進んでみたものの、大和の姿はどこにもなかった。

「(……どうしよう)」

不安になった瞬間、腕を掴まれ引っ張られた。

「しおちゃん」

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