【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。(最終話)
旅館を出た私たちは、近くの公園へと向かった。ベンチに腰を下ろした悠真さんが、私の手を取り優しく微笑む。
「会いたかった」
「……私も」
「あれから、どうしてた?」
「必死に生きてた」
そう、必死だった。今でこそ慎ましく平凡に生きているけど、故郷に帰って来た当時は、何もかもを失って息をするのも苦しかった。どうして私だけがこんな思いをしなきゃいけないのかと、悠真さんを恨めしく思ったこともある。だけど、それでも彼のことが好きな気持ちは変わらず会いたかった。ずっと。
「やっと離婚が成立したんだ」
会いたかったけど、もう会わない方が良いと思っていた。
私たちの想いを貫くには、あまりにも困難が多く、たくさんの人を傷つけた。不倫の代償はもう十分払ったつもりだけど、そう簡単に許されるものではない。
「随分長く待たせてしまったけど、やっと一緒になれるよ」
一緒になれるなら地獄に落ちても良い、全てを捨てても良いと思っていた。だけど、だけどね……。捨てられない大切なものが私にはできたの。
「ごめんなさい」
「どうして謝るの?」
「一緒にはなれない。いえ、ならない」
「どうして……」
その時、公園の向こう側に小さなシルエットが見えた。