【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。(最終話)
私の祖母に連れられて、ゆっくりこちらに向かって来る。
「私ね、やっと今幸せになれたの」
「それは……僕以外に良い人がいるってこと……?」
小さなシルエットが、私に気が付いて、大きく手を振る。買ったばかりの赤いコートは、汚すなって言ったのにもう泥だらけだ。
「うん。良い人がいるの。今はその人が大切だから、元に戻ることはしない」
「千紗、」
「会いに来てくれて嬉しかった。ありがとう。さよなら」
たくさんの愛をありがとう。
たくさんの思い出をありがとう。好きになってくれてありがとう。
人を愛する気持ちを教えてくれてありがとう。鞄の中の手紙は、これからもずっとお守り代わりに持っているね。さよなら、お元気で。
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私なりの幸せ
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「光莉(ひかり)」
「ママー!」
満面の笑みで飛びついてきた小さな体を抱きしめると、それだけで心が満たされる。何よりも、誰よりも、大切な私の天使。
「さっきのひと、だぁれ?」
「んー誰だろうね」
「ママのかれしでしょ~」
「違うよ、ママは彼氏なんかつくらないもん」
「どうして~?」