2022年9月5日 18:34
人は、どのように変容するのか 夏の終わり、生きものたちの姿に、ふと自分を重ねる
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
生きること、生きていくこと〜夏の終わりの山寺にて
京都の山寺でのこと。山門を入り、苔むした境内を歩いていると、ころっとした一匹の蜂に出会いました。
その蜂は木に登ろうとするのですが、登っては滑り落ち、登っては滑り落ち。地面に落ちて転がっても、また登りはじめる。それでもまた滑って落ちてしまう。
今度は、木の根を越えながら歩きだす。どこへ向かおうとしているのか、くねくねと地を這う木の根をよろよろと越えながら、やがて見えなくなりました。
けなげです。
触覚や翅が傷ついて飛べなくなったのか、命の終わりが近づいているのか。
飛べなくなったら、歩くしかありません。そうして蜂は生きていく道を見つけて進んでいく。蜂に思考能力があるのかわかりませんが、生き抜くために本能が歩くことを選択したのです。