くらし情報『水谷豊「映画『轢き逃げ』では被害者と加害者の両方を描きました」』

水谷豊「映画『轢き逃げ』では被害者と加害者の両方を描きました」

でも、片方は憧れられる存在で、もう片方はおもしろく振る舞ってもり立てるという役柄。こういう関係はよくあることだけど、ちょっとした嫉妬心やいたずら心が、大きな事件を招いてしまう。そこが始まりでした」

結婚式への打ち合わせに急ぐ秀一が運転する車が、人気のない路地裏で若い女性をはねてしまうところから物語は始まる。輝のささやきで、2人はその場から逃げ去ってしまうのだが――。

映画『轢き逃げ』で水谷さんは、監督・脚本家として、犯人である秀一と輝の心理を丹念に描いているだけでなく、轢き逃げされて亡くなった被害女性の父親・時山光央役を演じている。肩を落とし、少し丸めた時山の背中からは、ある日突然、娘を失った父親のぼうぜん自失と傷心の深さがにじみ出る。

「事件や事故が起こると、加害者と被害者に分かれますが、そのとき、どういう気持ちになるんだろうというのは、両方に対して感じることです。『轢き逃げ』は、映画として、加害者と被害者の両側を描いて行く必要があると思っていました。
悪者の加害者とかわいそうな被害者というふうに単純には分けられない。そういうことも描きたかったのです」

だから今作は、一般的なサスペンスの枠を超えて、人間が持つさまざまな側面に目を向けた物語となっている。

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