50代の恋愛描いた『平場の月』朝倉かすみさんの恋愛観にも変化?
今回は、特別じゃない、普通の人を描きたかったので、特殊な要素は入れていません」
普通の場所で営まれる日常、それが平場ということだ。
須藤と一緒になろうと決めた青砥だが、須藤はそれを拒み、これ以上会わないと言い放つ。「1年間だけ会わずに待つ」と約束し、ひとりの生活に戻った青砥はある日、別の同級生から須藤の「その後」を聞く。
このふたりのように、ほぼ誰にも知られず、ふっと始まってふっと消えていく恋は“普通にある”のかもしれない。
「年が年だけに、『こんなこと、あんなことがありました』なんてワーワー口に出さないだけで。そっと胸の中にしまって、恋までもいかず淡いままで通り過ぎていることは山ほどあるんじゃないかな、という気がしますよ。周囲も『最近どう?』なんてびっくりするくらい聞かなくなりますし。言わないからわからないだけで、ないように思われがちだけれど……やっぱりあるはずなんです」
一方で、年齢的に“最後の恋”を意識するころでもありそうだ。
「最後にしたい気持ちはわからなくもないけれど、決めてしまうのはどうかなと思います。『私、雨女だから』と同じ感じですね。あまり根拠がない。同じく“結婚”や“末永く一緒に”を当たり前のように恋愛の着地点と考えるのもどうなんでしょうね。