2019年11月4日 11:00
ANA客室乗務員で45年 通算飛行時間3万750時間29分での出会い
そのとき、誰かが映画『ロッキー』のテーマ曲を流してくれたんです。そう、私たちの国際線の第1便は、あの有名な勇ましい曲とともにスタートしたんです」
国際線就航以来、大宅さんは30年以上、チーフパーサーとして乗務を続けてきた。それだけ長いこと、第一線の責任者を任されていれば、いろいろなことがある。
ある日のヨーロッパ便でのこと。休憩時間に仮眠を取っていた大宅さんを揺り起こす者がいた。見るとエコノミークラスのパーサーだ。彼女は小刻みに震えていた。
「申し訳ありません、お客さまからクレームを頂戴して。
担当CAでは対応できず、私が行ったのですが、大変なご立腹で。『チーフパーサーを呼べ』と……」
サービスに時間がかかりすぎることへのクレームだった。
「40代ほどの男性のお客さまで、何時何分にベルト着用サインが消えて、何時何分に飲み物のサービスが始まって、自分のところに回ってきたのが何時何分で、と克明に記録されていて……、『時間がかかりすぎる!』と……」
ついに泣きだしてしまったパーサーに、大宅さんは「私が行きましょう」と優しく声をかける。ところが、まず向かったのは、その客の席ではなくギャレーだった。