2019年11月25日 06:00
被災地からの贈り物に…松本白鸚「サンマの上にこぼれた涙」
インタビュー場所となった都内の自宅でそう言って笑う白鸚さん。その傍らで、妻の紀子さんが恥ずかしそうに微笑んだ。
■被災地から…サンマの上にこぼれた涙
白鸚さんは人々に、悲しみや苦しみも希望に変えて、生きる喜びを与えることが、俳優の仕事だと考えている。だから、東日本大震災の直後も公演を続けたし、被災地も巡ってきた。でも、ときにはファンに勇気づけられることも。
「’12年に文化功労者に選んでいただいたとき、立派なサンマを3匹贈ってくださった方がいた。どなたかわからないので、手を尽くして捜したら、岩手県の仮設住宅に住んでいる女性の方でした」
ーーあなたの『勧進帳』と『ラ・マンチャの男』に勇気づけられたので、お祝いです。
お礼の電話をかけたら、こう返された。
その夜、夕飯に食べたサンマの上に、大粒の涙がこぼれ落ちた。紀子さんはこう続ける。
「この前、やっとその方にお会いできたんです。わざわざ東京まで『ラ・マンチャの男』を見に来てくださって、楽屋でお話ししました。また、元気をいただきましたよね」
半世紀にわたり、悲しみも喜びも分かち合ってきた夫婦。白鸚さんは“松本白鸚を襲名してからは、アディショナルタイム”だとほほ笑む。