「モンペと思われても」発達障害の息子を東大に入れた母の闘い
初めて行く場所、初めて会う人、初めてすること……初めては極端に落ち着きをなくすんです、とにかく大夢にとって何事も初めては、鬼門だとわかったんです」
そこで菊地さん、忙しい美容室の仕事の合間を見つけては、息子の「初めて」に付き合うことに。
「何でも予行演習をしたんです。学校の音楽鑑賞会の前には、たまたま入手したチケットでコンサートに連れて行きました。『今日2時間、我慢できたら鑑賞会も大丈夫』と。遠足も事前にコースを教えてもらって、2人で歩きました。『ここを見学して、あそこでみんなでお昼を食べるから』と教えながら」
運動会も予行演習は欠かせない。
「見知らぬ大勢の保護者が応援に来ますからね。それだけであの子が落ち着きをなくすのは目にみえてる。
だから、前日までにグラウンドに2人で行って。みんなでここに並んで、先生の『ヨーイ、ドン!』であそこまで走るんだよ、と」
幼いころから記憶力だけはよかったという大夢くん。小1、小2……と予行演習と本番を経験していくうちに、運動会そのものに慣れていった。小学校高学年になると、予行演習は不要に。
「徒競走で、よその保護者は『目指せ、1等賞!』と声援を送りますが、私は大夢に前の晩『頑張って、ちゃんとビリになれるかな?』って。