伊東四朗が振り返る芸歴60年間…就活全滅で演技の世界へ
昨年末、急逝した小松政夫と17年に撮った最後の2ショット
芸歴60年超、老いを感じながらも、新作舞台に挑む「最後の喜劇人」、伊東四朗(83)。演劇の世界に入ったのは、就活で全滅したことがきっかけの一つだったという。
伊東四朗は昭和12(1937)年6月15日、東京市下谷区(現・東京都台東区)で生まれた。本名、伊藤輝男。5人きょうだい、下から2番目の三男坊だ。明治29年生まれの父・金三郎は昔気質の職人で“遊び人”。とはいえ、この“遊び人”の父が、伊東のエンタティナーとしての素地を作ってくれた。
「歌舞伎は親父の影響かな。
着流しで三味線を弾いて小唄を唸るし、小さいときから歌舞伎座にはよく連れていってもらいました」
やがて戦火が激しくなり、戦争末期には母の実家のある静岡県掛川へ一家で疎開した。その掛川に、13歳年の離れた長兄が復員し、素人劇団を結成する。
「兄に『子役がほしいから、おまえ出ろ』と言われて出たのが、あたしの初舞台。小学4年生でした」
高校卒業後は就職希望だったが、強面が災いしたのか、就職試験は全滅だった。
「筆記は通るんです。でも、面接で落とされる。完全コネのはずの会社まで落っこちた。