伊東四朗が振り返る芸歴60年間…就活全滅で演技の世界へ
息子の成長を見届けて、父はその年、69歳で世を去った。
「1日に二言、三言しか喋らない人でしたけど。あれが父の最大のほめ言葉だったんじゃないですか」
てんぷくトリオは瞬く間に人気者になった。同時に、井原プロデューサーが、伊東個人を起用し始め、ソロでの活動もスタートする。69年にはNHK大河ドラマ『天と地と』に出演。伊東はシリアスな芝居の役者としても開花した。
76年、小松政夫(’20年没)と組んだ『電線音頭』がブレーク。鞭をふるって登場する“ベンジャミン伊東”は、逆立てた頭髪にナマズひげ、キンキラキン衣装のアナーキーなキャラクターだ。
「もう丸投げされたんでね。収録2週間前に、『電線軍団を作らせていただきます』ですよ。『なんなの、それ?』と聞かれても、言った本人が答えられない。苦し紛れにオンエアになったら、『ダリだ』『シュールだ』なんて言われたけど、とんでもない。『伊東の目はイッちゃってる』って心配されてね。恥ずかしくて、自分を隠したい一心でしたよ」
やけくその企画など続かないと思ったが、7%だった平均視聴率は、あれよあれよと20%の大台に。ベンジャミン伊東が注目されればされるほど、ドラマは難しくなるという危惧もあったが……。