2021年12月19日 06:00
ワクチン打てず就職もできない“無戸籍者”24時間相談受付のNPO
ゲンさん自身にも聞いた。彼が市川さんに連絡を取ったきっかけは、このコロナ禍だったという。
「15年前に妻を亡くして細々と暮らしていましたが、コロナ禍になっても、私には予防接種の通知は届きません。高齢で糖尿病の持病もあるので、まさに死活問題でした。そこでテレビで見た市川さんに連絡したら、すぐに地元の役所と交渉してくれて、コロナワクチンも10月までに2回打てました。その後も今日みたいに戸籍や在留資格のことで世話になってますが、市川さんの動きが早くて、私はよう、ついていけんで(笑)」
領事館での最初の交渉を無事に終え安堵したのか、ようやく笑顔を見せてくれた。
貧困やDVなど親の事情で出生届が受理されずに、戸籍のないまま育ち「無戸籍」となった人は、法務省が把握するだけで842人いるが(21年調べ)、実際には1万人以上ともいわれる。
保険証をもらえない、進学できない、免許が取れないなど生活の支障に加え、婚姻届が受理されず、子供が生まれても出生届を出せないという“負の連鎖”も生み出している深刻な社会問題だ。
大阪から帰りの電車を乗り継ぎながら、市川さんが話す。
「ゲンさんは、ずっと日本で暮らしていたという証拠となる写真などがあって、助かった部分もあります。