2022年5月8日 06:00
北条政子は“悪女”だったのか。妻、そして母としての苛烈な愛
一族の庇護のもとにあり、妻に選んだのも、乳母夫(後見役)で、13人の一人でもあった比企能員(ひきよしかず)の娘だった。しかし、
「頼家は、能員に操られているのではないか」
やがて、時政や義時はじめ御家人たちから不満が噴出する。
「この時代、乳母の存在は大きいんですね。子供にとっては実母か、それ以上。頼家は妻も比企一族で、周囲も比企で固められて。政子と頼家の間には、常に比企氏の存在があったと思います」(山本さん)
さらに13人の合議制もぎくしゃくとしだすなか、当の頼家が病いに倒れ危篤となったとき、時政と義時が動いた。「このままでは比企一族に幕府を奪われる。もはや、政子の次男の実朝を将軍にするしか道はない」
これを聞いた政子が、毅然として言い放つ。
「何を悠長なことを。能員は、父上を殺そうとしているのですよ。ここは先手を打ち、比企一族を倒すのです」
そして、能員や頼家の妻などを襲撃し、殺害。ところが危篤のはずの頼家が3日後に意識を回復し、今度は逆に「時政を討て」と命じたのだった。
再び政子が動き、長男に命じた。
「そなたは、もはや将軍ではない。すぐに出家して、伊豆国へ帰りなさい」